さて第2回レビューをサクサク進めたいと思います。
 今回紹介するのは、かつてテレビ東京で深夜放送されていた番組、『vermilion pleasure night』の1コーナー『フーコンファミリー』にしようと思う。思った。


 これを知ったのは2年前、友達の家でバミリオンのビデオを見たときだが、これがかなりの衝撃を受けた。
 なにしろ、出演しているのがマネキンのみなのだ。マネキンのみで撮影し、あとで声を入れるのである。音楽もなく、ひたすら淡々と続くマネキンドラマ。この時点でかなりそそられるものがある。
 出演しているのは、フーコン一家の息子マイキーと父親のジェームズ、母親のバーバラである。
 内容はフーコン一家の日常を送っているのだが、とにかくこの一家はブラックユーモアにあふれている。
 父親も母親もとにかく言葉遣いが単調で、「〜するんだ」「〜しなくてはいけない」と非常に説教くさい。そしてバカみたいに笑う。いや、笑っているところだけを取れば、アメリカの家庭っぽいかもしれない。しかしそこにアメリカ人に対する皮肉じみたものを感じるのは、単に僕がひねくれているからだろうか。
 バミリオン自体が深夜枠に放送され、大人のためのエンターテイメントとして作られたプログラムであったため、過激な発言も多い。


 例えば夫婦ゲンカでは、罵りあいがすさまじい。なにしろ、「この短小!」「ガバガバ女房!」とマネキンが取っ組み合っているのだ。非常にシュールである。
 それもその感情的なセリフすらどこか単調というか、声の心のこもり具合が皆無なところこそ秀逸であると僕は思う。マネキンの声が感情たっぷりだったら、逆に気持ち悪い。
 誘拐されたマイキーが1週間後にバラバラに解体されて戻ってきて、みんなで笑っていたり、バーバラが昼下がりの情事をしていたり、それをマイキーが覗いていたり。ジェームズに至っては、不倫相手に関係は終わっても身体の関係は続けよう、とさらっと言ってのける。普通に考えたらとても円満な家庭とはいえない。が、奇跡的というか異常というか、それでもフーコン一家は円満な家庭なのである。むしろドロップアウトしないマイキーがすごいと言うべきか。ジェームズの言うとおり、マイキーは偶然にもいい子に育ったようだ。


 そんなフーコンファミリーであるが、非常にマイナーだと思っていたら、意外に人気があったらしい。そもそもバミリオン自体が映像的に認められ、フーコンファミリーに至っては世界規模で支持を受けた作品だというのだから分からないものである。むしろこれは芸術作品ととらえるべきか。
 そもそもバミリオンプレジャーナイトはテレビ番組ではあったが、内容は音楽、ファッション、アート、ブラックユーモアを詰め込んだ30分の作品であったと思える。これらは企画としても映像としてもハイセンスで、上っ面の面白さなどではなく、見る者の数だけ楽しみの数が得られるような構成だった。
 それぞれの分野で突出してたがゆえに、すべてのコーナーが面白い、とは言いがたいが、個人の好みによっては非常に心に残るものを作り出している。


 さて、僕の知らないところで非常に有名だったらしいフーコンファミリー。これが若い女性にうけていたのも驚きのひとつだったが、これが夕方にテレビシリーズとして放送されていたからさらに驚きである。
 『オー!マイキー』とタイトルを変え、夕方に5分間の番組として放映、さすがに時間帯もあったので、内容に過激なブラックユーモアはないが、それでも特有の毒は含まれている。
 さらには映画にもなり、上映後もアンコールが続くという人気を博したそうだ。


 この作品を見てから、マネキンを見ると思わず笑みを浮かべてしまう。特にマイキーのマネキンは入学の季節になると、よくランドセルを背負っている。これはマイキーが有名というより、マネキン自体がメジャーで、それをマイキーとして使ったというべきだろう。
 とにかく言葉では言い表せないのが、フーコンファミリーでありバミリオンプレジャーナイトだ。その中に込められた斬新な映像と演出は、どうやったって言葉で伝えられない。とにかく見れば分かる、と最終的には陳腐な言い方になってしまう。


 こんなレビューで興味を持った人は、以下のリンクからバミリオンとフーコンファミリーの魅力の片鱗にふれて欲しい。


『vermilion pleasure night』バミリオンの公式サイト

『オー!マイキー』テレビ番組オー!マイキーの公式サイト

『フーコン・ファミリー』フーコンファミリーをインターネット配信している。サンプルもあり。